隈研吾氏設計 有和中学校(和歌山・有田市)のシンボルとなる什器をエストレージが製作
2024年4月、有田市内にある4つの中学校を統合し、新たに有和中学校が開校します。
新校舎の設計は隈研吾建築都市設計事務所・二本柳慶一建築研究所設計共同企業体。
<建築概要>
●『つなぎ、開く』を考え、デザインされた校舎です。4つの中学校がつながる、またスポーツ施設などもあり地域住民ともつながる、地域にひらかれている施設。
●デザインの一部に、紀州材を使った天井や、みかんの皮を練り込んだ中央階段の壁など地元産の自然素材を使用。
この新校舎の2F-4Fに展開するシンボル什器をエストレージで設計•製作しました。
地域の自然素材を採り入れた全長2mのシンボル什器
シンボル什器をデザインするにあたり、隈研吾建築都市設計事務所の担当者はこう語ります。
地域の自然と文化に誇りや愛を持てる工夫を
中学校の敷地は、みかんのだんだん畑が見え、山々と有田川に囲まれています。自然が近くに感じられる場所。だからこそ、地域の資源を建築に取り入れたい。
そのような思いがありました。
地域の自然と文化に誇りや愛を持てる工夫を探している中、市役所にある「みかん科」と出会い、みかん畑や工房を視察。
みかんは、有田市の自然環境と風土によって育まれた自然素材です。地元の人々にとって身近に感じる鮮やかで美しい「みかん色」を使い、馴染みのない形に落とし込むデザインを考えました。
みかんをモチーフとした「洗面ボール」
新しい環境で学生たちが楽しく学び、交流できるオープンな空間にこのシンボル什器の設置を計画しました。
みかんの形状は丸く、学生たちがこの円形の什器を囲んで、楽しく集まれる。この什器が各学年の拠り所となることを意図したデザインコンセプトです。どのような交流のきっかけを作るかを考え、「洗面ボール」の什器としました。
デザインコンセプトをかたちに
製作設計担当したエストレージの木﨑はこう語ります。3Dパースを拝見し、今までに見たこともないこの什器をどのように製作するか?
隈研吾建築都市設計事務所の担当者の方と共に設計プランを検討しました。
ドーナツ状の合板ベニアを積み重ね、半球体を再現するプランはどうだろう?または舟型多円錐図法といって地球儀を作成する際の図法を用いて半球体をつくるのはどうだろう?
また、この洗面ボールの上部には、重量120kgのシンクを載せます。
そのため、デザインとしての美しさだけではく、強い耐久性も必要です。
様々な角度から検証し、今回は内部の構造にステンレス角パイプを円形状に曲げて120kgの重量に耐えられる骨組みを構成。表面木部を舟型多円錐図法を用いて設計しました。
そして、その設計図はエストレージの自社工場にいる職人、平野の手に渡ります。
寸分のずれも許されない精緻な作業
この設計図の通り、みかんの丸みを木部つくるためには、64を超える弓型の木部を一つひとつ切り出し、それらを隙間なく正確に組み立てていく必要があります。
そのために重要なのは、木部を寸分の狂いなく加工できる機械(NC旋盤)。
そして、加工された木部を正確に組み立てる職人の手仕事。
これら精度の高い機械と職人の手により、弓型の木部がつくられ、それらを隙間なく組み合わせることで、丸みのあるかたちに仕上がります。
そして、有田市の特産であるみかんの皮を練り込んだ素材で左官塗りを行い、最後に、シンクを取り付け、作品はようやく完成します。
<担当した木﨑のコメント>
実際に完成した洗面ボールは直径2mで想像よりもかなり大きく感じました。
構想から約1年半。あっという間に過ぎていきました。
イメージ通りの洗面ボールに仕上がり、隈研吾氏ご本人、隈研吾建築都市設計事務所のご担当者の方々、そして、有田市の皆様が喜んでいただく様子を見てようやく安堵しました。
さらに、実際に使用される生徒の皆さまにに喜んでいただければ嬉しさも倍増します。
エストレージは今後もニーズに基づき、付加価値の高いを作品を製作いたします。